Novel bispecific oligonucleotide therapeutics for the treatment of chronic inflammation/allergy
DTI Inc.

研究開発

免疫学、そしてその先へ:微小環境の「解消(レゾリューション)」を切り拓く

株式会社DTIは、東京に拠点を置く非上場のバイオテック企業であり、ファースト・イン・クラスの二重特異性RNAオリゴ核酸(BSO)という独自プラットフォームの開発を進めています。当社は、炎症が慢性化する際に不可欠な組織微小環境における特殊な血管の「ゲートウェイ(入口)」を標的とすることで、慢性炎症性疾患・アレルギー疾患・自己免疫疾患の治療パラダイムを転換することを目指します。

サイトカイン抑制を超えて:血管および組織の微小環境を制御する

慢性炎症は、進行性の組織破壊と重い臨床症状を引き起こします。現在利用可能な治療法—外用ステロイド、カルシニューリン阻害剤、PDE4/JAK阻害剤、全身性の生物学的製剤(例:TNF-α、IL-17、IL-23)など—は、主に下流のサイトカインを抑制することに重点を置いています(参考文献[1,2])。
しかし、これらの治療は、慢性炎症を維持している組織構造そのものを断ち切るものではありません。慢性病変では異所性の高内皮細静脈(HEV)が形成され、これが特殊な血管の「ゲートウェイ(入口)」として働き、エフェクターTリンパ球、組織常在型メモリーTリンパ球(TRM)、および形質細胞様樹状細胞(pDC)の組織への持続的な浸潤や集積を促します(参考文献[3-7])。全身療法を中断すると、これらの血管ゲートウェイは活性が保持され、再発や、全身性生物学的製剤に対する二次無効(LOR)を招くと考えられます。

二重特異性プラットフォーム:時間的・空間的な同時阻害を可能にする

当社の主力候補品であるDS-06は、白血球の遊走をその起点で遮断する、標的化オリゴ核酸治療における画期的な新薬候補物質です。HEV上のL-セレクチンリガンド(PNAd)—免疫細胞が炎症を起こした皮膚に接着・ローリングし、ホーミングすることを可能にする—の合成は、特定の糖硫酸転移酵素が関与する、高度に協調した段階的な酵素カスケードに依存しています(参考文献[8,9])。
従来の単一標的アプローチとは異なり、DTI独自の二重特異性デザインは、CHST2とCHST4の両mRNAを、時間的にも空間的にも同時にサイレンシング(発現抑制)するよう設計されています。この前例のない「時間的・空間的な同時阻害」は、内皮細胞上のL-セレクチンリガンド合成経路を完全に崩壊させ、病態を担う細胞の供給ラインを血管ゲートウェイのレベルで物理的に遮断します。

皮膚科領域における“Pipeline-in-a-Product”

外用剤として開発されたDS-06クリームは、非特異的なIFN/TLRシグナルを惹起することなく、人工皮膚を効果的に透過することが示されています。HEVゲートウェイにおいてTリンパ球およびpDCの移動を効果的に遮断することを目指すDS-06は、以下の4つの主要な適応症にわたり、高度に差別化された“Pipeline-in-a-Product”の機会をもたらす可能性を秘めています(参考文献[4-7]):

  • アトピー性皮膚炎(AD): 難治性の苔癬化に対する微小環境の「解消」
    標準的な外用剤では慢性的な白血球浸潤を解消できない、硬く肥厚した局所(プラーク)に作用するよう設計されています。DS-06がタクロリムスと比較して優れた炎症制御を示し、HEV様血管および真皮に浸潤するCD4陽性Tリンパ球を強力に減少させることがin vivoマウスモデルにより裏付けられており、本アプローチは局所の微小環境を根本的に回復させることを目指します。
  • 乾癬: 再発予防および効果減弱(LOR)対策の上乗せ
    生物学的製剤による皮疹消失後の、先制的な維持療法となり得る位置づけです。新規(de novo)のHEV形成を遮断することで、TRMの再活性化や新たな免疫細胞の流入を防ぐと想定され、再発を防ぐ真に局所的な疾患修飾への有望な道筋を提供します。
  • 皮膚エリテマトーデス(CLE): 全身治療を回避する治療
    血管内皮を介したpDCのホーミングを選択的に遮断するよう設計された、ファースト・イン・クラスの外用コンセプトです。深部の活動性病変に対し、リスクの高い経口免疫抑制剤に代わる強力な選択肢となり得ます。
  • 水疱性類天疱瘡: ステロイドを軽減する補助治療
    強力な非ステロイド性の外用補助剤として構想されています。好酸球およびTリンパ球の血管からのリクルートを断つことで、全身性の高用量ステロイドに伴う重篤な感染リスクを低減すると想定されます。また高齢の患者集団において非常に強力な外用ステロイドが引き起こす皮膚の萎縮を回避することを目標とします。

プラットフォームの拡張:免疫学から腫瘍学(がん領域)へ

DTI独自の二重特異性オリゴ核酸プラットフォームの可能性は、皮膚科領域をはるかに超えて広がります。二つの標的に対して時間的・空間的に同時阻害ができることから、当社のプラットフォームは、がん領域で強く求められているフロンティアの一つである「合成致死(Synthetic Lethality)」にも展開が可能と考えられます(参考文献[10])。
合成致死に対する現在のアプローチは、しばしば併用療法に依存していますが、併用療法では薬物動態の不一致や全身毒性の重複によって妨げられることが少なくありません。DTIの単一分子による二重特異性分子の設計は、まったく同一の腫瘍細胞内において、相補的な二つの経路のノックダウンを完全に同期させることで、これらのハードルを克服します。
当社は、標的化された合成致死を誘導するための二重特異性RNA技術の応用を積極的に模索しています。株式会社DTIでは、主力候補品の臨床開発を加速し、また多様な腫瘍学・免疫学のパイプラインにわたる当社独自の二重特異性プラットフォームの広大な可能性を共同で探索するため、戦略的な製薬パートナーを求めています。

References(参考文献):

  1. Bieber T. Atopic dermatitis: an expanding therapeutic pipeline for a complex disease. Nat Rev Drug Discov. 2022 Jan;21(1):21-40.
  2. Yuan M, Lee J, Taylor M, Cho RJ, Cheng JB. Advancing Precision Medicine in Inflammatory Skin Disease. Am J Clin Dermatol. 2025 Nov;26(6):853-861.
  3. Streeter PR, Rouse BT, Butcher EC. Immunohistologic and functional characterization of a vascular addressin involved in lymphocyte homing into peripheral lymph nodes. J Cell Biol. 1988 Nov;107(5):1853-62.
  4. Blanchard L, Girard JP. High endothelial venules (HEVs) in immunity, inflammation and cancer. Angiogenesis. 2021 Nov;24(4):719-753.
  5. Budair FM, Nomura T, Hirata M, Kabashima K. PNAd-expressing vessels characterize the dermis of CD3+ T-cell-mediated cutaneous diseases. Clin Exp Immunol. 2024 Mar 12;216(1):80-88.
  6. Kogame T, Kabashima K, Egawa G. Putative Immunological Functions of Inducible Skin-Associated Lymphoid Tissue in the Context of Mucosa-Associated Lymphoid Tissue. Front Immunol. 2021 Aug 26;12:733484.
  7. Hashizume H, Horibe T, Yagi H, Seo N, Takigawa M. Compartmental imbalance and aberrant immune function of blood CD123+ (plasmacytoid) and CD11c+ (myeloid) dendritic cells in atopic dermatitis. J Immunol. 2005 Feb 15;174(4):2396-403.
  8. Yeh JC, Hiraoka N, Petryniak B, Nakayama J, Ellies LG, Rabuka D, Hindsgaul O, Marth JD, Lowe JB, Fukuda M. Novel sulfated lymphocyte homing receptors and their control by a Core1 extension beta 1,3-N-acetylglucosaminyltransferase. Cell. 2001 Jun 29;105(7):957-69.
  9. van Zante A, Rosen SD. Sulphated endothelial ligands for L-selectin in lymphocyte homing and inflammation. Biochem Soc Trans. 2003 Apr;31(2):313-7.
  10. Ueda K, Yamada Y, Tanaka H, Sato T, Sasaki J, Sakamoto S, Minomi K, Yamada H, Sugimoto M. A novel bispecific siRNA concept: Efficient dual knockdown of YAP1 and WWTR1 with a single guide strand. Mol Ther Nucleic Acids. 2025 Nov 10;36(4):102768.